このところ建設にまつわる仕事をしているせいか、街を歩いていても工事中の建物に自然と目が向かいます。そんななか、出張で目黒に泊まりました。通りには「戦後の名建築」とされる聖アンセルモ教会(設計:A.レーモンド)が、街に根づいて、落ち着きのある都市景観を生みだしています。
出入り自由とのことで足を踏み入れると、まず光の取り入れ方の絶妙に、声がもれるほどの感嘆を覚えます。コンクリートで打ち放された折れ線状の壁から、一条、二条…の光が、ほの暗い祈りの場を射しています。祭壇はもちろん階段の細部にいたるまで、レーモンド夫妻こころづくしのデザインが息づいて、清浄な安らぎを与えてくれます。
ずいぶん前ですが、京都山科の一燈園(懺悔奉仕光泉林)に泊めていただいた時、数寄屋づくりの道場にも、丸窓の光が同じような効果を生みだしていました。たとえば神道をもちだすまでもなく、考えてみれば、世界の様々な宗教建築と「光と影」は切っても切れない関係にあるようです。あるいは、すぐれた建築そのものが「光と影」に依っている、とも云えそうです。
「静謐を邪魔するのでは…」と恐れ、内部の写真は撮っていません(しかも外観はピンあま)。ですが、ネットで検索いただくと、建築家さんたちがブログなどに、私には及ばない詳しい案内と写真を掲載されています。ぜひ一度、ご覧いただければと思います。
